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へら鮒 2018年9月号 へら鮒
2018年9月号

夏こそ「一景」で釣る!
今回は、7月3日(火)に山梨県富士河口湖町にある精進湖で、2人のアングラーの素晴らしい釣りを目の当たりにする。
まずひとりめは、徹底した理詰めの釣りで、きっちりと結果を残す吉田新太郎アドバイザーである。絶好調が伝えられている「小割」で、竿18尺いっぱいの両ダンゴを披露してもらう。
さすがに魚影はすこぶる濃く、「寄せ」は必要なかったが、だけに粘り気が強いエサではへらにピンポンされてしまい、ウキはなかなかナジみ込んでいかない。
そこで、ベースエサへと新エサの「SB彩雲(さいうん)」を差し込み、開かせつつも確実に芯残りするようにエサへと手直しを加える。そしてそのエサを、なにひとつ躊躇することなく、さらに上層へと湧き上ってきたへらの中心目がけて打ち込んだ。
結果、アタリ数は格段に増したのだが、吉田が狙ったのは「アタリ返し」のみ。こうして、意図的に良型ばかりを揃えながら釣っていくのだった。
吉田の釣りは基本的に超攻撃的であるが、時として、状況に応じ自在に変化していく。そして、その釣りの理論はとても分かりやすく、みなさんの参考になることだろう。
さぁ、この夏は「一景」で釣りを楽しもう!

文と写真:本誌・諸

取材協力:湖畔荘
〒401-0336 山梨県南都留郡富士河口湖町精進588-14
TEL:0555-82-2502

広松久水産株式会社
〒 813-0018 福岡市東区香椎浜ふ頭2-3-24
TEL:092-672-1017
http://ikkei-jpn.jp/

よしだ しんたろう
1949年生まれ 東京都葛飾区在住
へら暦40年、へら鮒釣りの全てを知り尽くすベテランアングラー。己の理念を追求し、一線級が揃う所属クラブにて長年に亘り真剣勝負し、日々釣技に磨きをかける。また、いち早く自らのクラブを立ち上げ、後輩の指導にも大いに力を入れている
ビッグへら鮒会、FB クラブ所属
TEAM 剛 会長
一景アドバイザー

「SB 彩雲」は、エアーを大量に含む 竿18 尺いっぱいでの吉田のベースエサは…「SD 蒼天」3「MD 粘りのダンゴ」1「SB 彩雲」1 に水1

ウケさせろ!

早朝、精進湖は周囲の小高き山まで雲が低く垂れ込めていた。湖畔荘から出舟した吉田は、1本オールで静かに湖面を漕ぎながら「小割」へと向かう。その「小割」は、前日に行われた例会で大釣りが記録されていたが、ロープに舟付けしたのは吉田ひとりだけだった。これでは逆に釣りづらいかも…。吉田は、少々不安げな顔を見せながらも、おもむろに継いだ竿は18尺。いっぱいのタナを攻める。当然、エサは両ダンゴだ。

「ダンゴの時期はダンゴで釣りとおす」という、根っからのダンゴマンでもある吉田が、新エサの「SB彩雲(さいうん)」をどう使いこなすのか興味津々であるが、まずは、この「SB彩雲」について話を伺うことにした。
「最大の特徴は『エアを大量に含むエサ』ということなんだよね」

ウキ「淳作」 ボディ12cmのPCムクトップ エサ落ちは
11目盛中、4目盛沈めに設定 竿「翼」18尺 道糸 1.2号 ハリス 0.5号 55-65cm ハリ 「ダンゴヒネリ」6号

精進湖・小割
竿18尺いっぱいの両ダンゴ

なぜ、エアを含むといいだろうか?
「それは強くウケさせるためだね。ウケは両ダンゴの釣りにおいて、イロハの『イ』だからね」

ウケさせることは釣るための基本中の基本で、重要な第一条件となるのだ。ウケなければ何も始まらない。そのウケを吉田は以下のように説明した。
「みんなのウケはウキが立ち上がってからの『フカフカ』でしょう。この『フカフカ』はサワリ。サワリはあくまでサワリ。ここでの判断は魚がいるかどうかだけで、

そのサワリが何の魚のものかは分からない。へらの場合は『フカフカ』として停止する。これがウケ。だから、停止してからの『チッ』や『カチッ』、または食い上げなどで釣れてくるんだ」

手際よく作ったベースエサは…。

●「SD 蒼天」3
●「MD 粘りのダンゴ」 1
●「SB 彩雲」1
●水1

バラケは粉の状態でよく撹拌したものへと水を入れ、左手(エサを付ける方の手でエサも作ること!)を熊手状にして、指先に粘り気が感じられるまで30回ほどかき混ぜた。そして、5分ほど放置し、十分に水分を吸収させたものを手水で調整。エサのタッチはヤワネバ

へらをこれ以上無駄に寄せることは必要ない。だけにエサ付けも極力丁寧である。吉田の場合、いつも丁寧なのであるが、直径1cm強に綺麗な円形に丸めたエサの上部からハリを差し込み、チモト部分を軽く2~3回整えたものを打ち込んでいく。さすが精進湖。すこぶる魚影で、ウキはいきなり強くサワられた。だが、エサが少々軟らかいようで、すぐに「SB彩雲」が生麩のまま追い足される。ウキは「スクッ」と素早く立ち上がり、肩の位置で「フカフカ」と強くサワられた。すぐに狙いの「停止」が出始めると、そこから「ドン」と強く落とされ、いなり釣れる。
「数を釣るのであれば、取っていくアタリはウケてからの『チッ』だけど、どうしても型が小さくなってしまう傾向が高い。デカいのを狙うならそこからのアタリ返しだよね」

狙いは良型である。
「アタリ返させるには、ナジむ途中のウキが上がって来てはダメ。上がるというのはエサにボソっ気が足りない証拠」

だから「SB彩雲」をブレンド、さらには追い足し、バラけても芯残りするエサを作ったのだ。エサはいきなり合う。

まずは、とにかく、
カラツンを出せ! エサをどう動かしていくかは、カラツンで判断する

寄りが厚い位置

エサは軽くてボソっ気があるものがいい。こうしてバラケ性を増すと、へらに攻撃されピンポン状態となり一向にナジみ込まなかったウキが、ナジみながらちゃんとウケまでが出るようになった。もう、こうなればイレパクになるもの時間の問題であるが、吉田はまだ真剣にウキを凝視し続けている。どうも様子がおかしい。ウキは意外や意外、すんなりとナジみきってしまってるのだ。もちろん、これではアタらない。例えアタったとしてもカラとなってしまうため、ナジみきってからは待つことなどなく、「ナジんでは切り」を繰り返していく。こうしてエサ打ちをテンポよく打ち返していけば、自ずと釣れてくるはずである。そこから数枚を釣ったが、ふと、ウキの位置をさらに深くした。
「へらの寄り方はエサを中心としたダイヤモンド型。その寄りが一番厚い位置で釣りがしたいでしょう」

吉田の攻め方は常に理にかなっている。なおかつ、1枚でも多く釣るためにとてもどん欲である。すでにいい感じで釣れるようになっているのだが、満足する状態にはまだほど遠いようだ。カラも多い。
「うちの会員には、『まずはカラツンを出せ!』ってよく言うんだけれどね。そして、大事なのがそのカラツンを見極めること。どういうことかというとね…。

●浅ナジミでカラツン=エサが持っていない。
●深くナジんでのカラツン=エサが持ちすぎている。

と、カラツンの出方で判断することが容易に出来るでしょう。それならエサをこう手直しして合わせていきましょうと、すぐに分かる。そして、その合わせる方法はたくさんあるけど、ハリスを詰めたり伸ばしたりは最終手段で、まずセオリーはエサをいじることだよね」

エサをどう動かしていくのかは、カラツンが出てから判断していくのだ。

【指先でコロコロ】

いつも綺麗なまん丸エサ付けで釣っていく吉田だが、さらにエサ持ちをよくするために、丸めたエサを指先でコロコロと転がし、エサの表面に粘り気をつけていった

つり宿 青木ヶ原

1.「SB 彩雲」が追い足され、比重は軽いままバラケ性を強めたエサ。タッチはヤワネバだ 2.ハリはエサの上部からハリ先を差し込みセンターへ 3.チモトというよりエサをクルクルと軽く2~3回転がし軽く圧を掛けて整える 4.とても丁寧なエサ付けだ

アタリ返し

テンポよく、さらには見切りがとても素早いエサ打ちで完全にタナへと寄せきったへらをここから釣り込む。が、やはりというか浅ナジミからのカラが多い。吉田は「エサ自体はほぼ完璧」とばかりに、通常でもとても綺麗に丸めているエサをさらに指先でコロコロと数回転がし、エサの表面をコーティングして確実に持つようにするのだった。指先でコロコロ。たったこれだけのことだが効果はてきめん。強くサワられ、ウケられたウキは小さく「チャッ」とアタってきた後も、2回、3回と鋭くアタリ返してくるのだった。

なんと、この指先で行った簡単な対応だけで、求めていたアタリ返しがいとも簡単に継続するようになった。吉田は素早くコンパクトなアワセを決め、連続で竿を曲げていった。「ね、釣れるでしょう」と、納得の表情で記者を見つつ、湖面を割った尺上をタマ網へと流れるようなスムーズな動作で収めるのだった。この「釣れるウキの動き」をしっかりと確認すると、今度はボウルの中のエサへと直接手を加える。熊手状にした左手で5回かき回す。そして、さらにもう5回。こうして、ウキの動きを確認しながら5回ずつかき混ぜることによりエサへと粘り気を付けているのだ。
「この手直しは、最大で60回まではやってみるよ」

それ以上の粘り気が必要な時は、さすがに「無理エサ」となってしまうため、エサの配合を替えるそうだ。手直しは、エサの比重が足りなければ「MD粘りのダンゴ」を、行きすぎてしまい逆に深くナジみきってしまうようならば、バラケ性を復活させるべく「SB彩雲」を絡めていく。最初から的を射ているベースエサだけに、手直しも使っているエサだけで十分に対応することが可能。一見、難しそうな手直しも、とても簡単というわけである。

特集Ⅲ【精進湖、夏べら全開】 アタリ返す位置となる「急所」までエサが持たないと、エサをひと回り大きくする。 アタリ返しで、納得の良型を仕留める!

エサを大きくする

時々、「チャッ」と小さくも鋭いアタリへも積極的にアワせていたが、ここからは狙いを完全に「アタリ返し」へとシフトする。数はもういい。さらなる大物を仕留めにかかるのだ。

へらはエサ打ち地点の水面直下にかなり多く見えてきた。ウキへのサワリはかなり長くなった。となると、吉田の釣り込みも徐々に加速する。毎回のようにアワせていく。

雲の切れ間から夏の青空が見えてくるようになるとアタリ数はさらに増加し、吉田の竿は快調に曲がり続けた

雲の切れ間から夏の青空が見えてくるようになるとアタリ数はさらに増加し、吉田の竿は快調に曲がり続けた

ウキの立ち上がりが遅くなると、エサが「アタリ返す」という急所まで持たないことが多くなった。すると、エサ玉をひと回り大きくしたものをハリ付けした。

そして、再びアタリ返しを取っていくと、ついに地べら化した肉厚べらが湖面を割った。吉田も「これを狙っていたんだ」と納得する、とても美しいへらである。
「釣りって生き物が相手だからね、食うか食わないかなんて、その日の状態は変わって当然。だからこそ、最初から自分で釣りを難しく考えるようなことはしないで欲しい」

ハリス長やハリなどはまったく変えることなく、エサへの手直し、それもほぼ指先だけの対応で釣りきってしまった。それだけ、吉田が作ったエサが完璧だったということである。