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へら鮒 2016年12月号 へら鮒
2016年12月号
特別企画 NEW ブランド「一景」両グルテン宙釣り使いこなし術!!in 富里乃席 高久勝俊

晩秋から年末にかけての一大イベント、「新べら」放流。
放流直後はまだ一度もハリ掛かりしたことがないので、
ハリにエサが残っていれば、
食いが素直なだけにアタって釣れてしまう。
時間の経過とともに釣りきられてしまうことから、オール新べら釣りとはならないが、
長竿で沖めの宙を両グルで狙える季節限定の釣り方となる。
刺激を求めて新エサ「一景」でチャレンジしてみてください。

写真と文 本誌 = 伊藤洋一

取材協力:富里乃席
TEL:0476-92-2281
広松久水産株式会社
TEL:092-672-1017
http://ikkei-jpn.jp/

新エサ「一景」でチャレンジ

新べら放流の恩恵を受けての両グル宙!

秋の深まりとともに気温が低くなってくれば、当然水温も低下するのが自然の節理。現状のままでは冬場は魚の活性が悪くなり、ウキの動きが少なくなってしまう。

釣り人は全く釣れないのではつまらなくて、足が向かなくなるもの。釣り場は冬場でも、ウキを動かそうと口数を増やす意味で、冬が近づいてくると「新べら」放流を開始する。

ただ、その新べらは、静かな環境で大きく育てられただけに臆病である。放流された場所に慣れていないこともあり、人災を嫌って物音が聞こえづらい沖めに居着く傾向が強い。

放流直後ならば、「お腹を空かせて」いるので、短竿狙いでハリにエサが付いていればウキが動き、釣れてしまって爆釣となるが、そんな状況は2日と持たない…。

新べら放流の恩恵を受けての両グル宙!

今回、取材の舞台となった「富里乃堰」では、10月14日の営業終了後、奈良県にある「魚昌養魚場」から1枚800g平均になるまで育て上げた完全養殖べらが3t放流された。
その翌日には同池の「釣好会」の例会が開催されて、早朝はその新べらが固まっていたエリアに入った会員は2投目から釣れ始まり、17投で15枚とウキが動けば竿が大きく曲がる爆釣に湧いた。

取材日の2日前に檀谷オーナーに状況を聞いてみると「新べらの荒食いは落ち着いてしまった。ポツポツと釣れているのは竿21尺でタナ3本以上と、底近くの方がいい。新べら主体は厳しいが、昨年に放流した傷の少ないコロっとした良型が釣れてますよ」とのことだった。

この時期は、昨年度に放流された魚達が池にようやく慣れて口を使い始めるので、よく見ないと「新べら」と勘違いするほど魚体の綺麗なのが釣れるのである。
「ウキの動きが淋しくなる冬場が訪れる前に、季節限定の長竿両グルテン狙いで綺麗なへら鮒の数釣りを披露してください」とお願いしたのは高久勝俊氏。

リクエストはさらに続いてニューブランド「一景」のグルテンで…と。

両グルの宙狙いでは、長ハリスでのナジミ際の長いウケは不要!?常識外れとも思える短バリスで、スゥーと「ダイレクト」にエサがタナに入る寸前、直後の鋭いアタリを狙い撃ちしていくのが高久流。 状況が全く分からない手探り状態のときはハリスは長めからのスタートだったが、ナジミ際での長いウケは釣りを複雑にしてしまうということで、どんどんと短くして最後は20 — 27cm

指先があまり「ベトつかない」タッチ

10月24日(月)、6時少し前に到着し、気になる「新べら」のモジリを確認しようと高台にあるテラスから、薄日が差し込む水面を見つめていると、最奥から薄着では「寒い」と感じる北風が吹き抜けていく。外気よりも水温の方が高く、モヤがユラユラと立ち上っているなかで、顔を出しては消えていく「モジリ」の波紋が広がっているがすべて旧べらのようで、新べらっぽい大きな波紋は確認することができない。

高久氏も到着して合流する。「結構、縦に長くて緑豊富な環境のいい釣り場です ねぇ~」と、その言葉を聞いて、この日が初釣行だと気が付いた。
「安食周辺まではよく来ますが、それから先へは何故だか機会がなかったので、どんな釣りになるか不安と期待が交錯してワクワクしています」
「新べらが多く交じる可能性が高いのは、渡り桟橋先のワンド」というオーナーの勧めで、西桟橋75番に腰を下ろして準備する。

大きめのテーブルに万力をセットすると「寿仙」のがっちりした太めの笛巻デザインの竿掛けを差し込んだ。その上に年に1~2回しか使わないという竿21尺を乗せた。タナ3本。

ウキはナジミ幅が出やすいようにと、PCムクトップが装着さ れている「孝舟作」を使用した。オモリは2点巻き

まずは、ハリなし状態で、ある程度のウキ調整をする。ミチイトは、この釣りでは珍しいPEライン0・3号。ウキは「孝舟作」PCムク9番(羽根2枚合わせB 9cm、カーボン足7㎝、PCムク21cm)全11 節で2節沈みの仮設定。
「自分的には長ハリスは好きではないので、最初から短いハリスで釣っていきたが、全く状況が分からないので、情報を探れる最長から始めてみます」と、ハリス0・4号、40—50cm。ハリは上下「バラサ」6号を取り付けた(今年こんなに長くしたのは始めてとのこと)。エサ落ちを再調整して水面に7節出し。

ハリス箱の中には、チチ輪で決めた長さで何種類も用意されている。最長で50cmである。
開きを抑えた「軽め」のエサを長ハリスでゆっくりと落下している最中にサワらせて「削らせ」、タナに入った瞬間に食い頃の大きさにして仕留めるのが主流。50cmでは短いと違和感を感じる人の方が多いように思えるが…、高久氏は仕上がったセッティングを見て「長すぎて釣れる気がしない」と苦笑いを浮かべる。

バッグから「一景」シリーズのグルテン5種類を取り出した。
「それぞれに個性があって、ウキの動きの状況に応じてブレンドを変更して合わせていればいいので簡単です。もうひとつの特徴はグルテンエサ特有の繊維がまとわりつく『ベタベタ感』があまりないので、道具や着衣が汚れづらいです」

探りの段階では、圧調整で反応がいい持たせ方を探っていく

「商品名通りに開きがいい『バラケグルテン』単品の水標準作りでは、タナ3本と深いので、寄ってくるとバラけ過ぎで持ちが悪くなってしまう。なのでブレンドしていきます」
小さなボウルに「強力グルテン」60cc、「バラケグルテン」30cc、水90ccを入れると、すぐに指先を熊手状にして全体の硬さが均一になるまで10回程度かき混ぜた。3分間放置すると水を完全に吸い切って落ち着いたようだ。

その作りっぱなしの表面を少量指先でつまみ取り、直径1㎝ほどの丸い形に整えると、その中心にハリを埋め込んでチモト部分だけを軽く押さえて角張らせただけのラフ付けとした。

6時40分、「こんなに長竿は本当に久しぶり…」と呟きながら、1投目が正確にウキの立つ位置にピタッと落とし込まれた。その一連の竿捌きからは「久しぶり」の言葉があてはまらないほど。

注目のナジミ幅は、エサ落ち目盛で停止したままである…。
「強力グルテンを倍にしても持たないか~。繊維で持たせるのがグルテンエサの特徴です。マッシュが強烈に開かず、最初からドップリと深ナジミするようならば、売りの『軽さ』が半減してしまうので、最初は持たないぐらいの方がいい。ハリ付けの際の圧を強めればナジむと思います」

チモトをしっかりと強く押さえ、スゥーと2節ナジんで停止したのを確認すると、これ以上待つことはなく、21尺という長さを感じさせないハイテンポで次々と打ち返していく。
10投目ぐらいからナジミがゆっくりとなり、寄りの気配が感じられるようになってきた。打つほどにナジミ際で弱々しくウケられて、解除されては再びナジみ始めるを繰り返して停止することはない。

2節ナジみきった直後に「チクッ!」と落とされた。「バシャ~」と豪快にアワ せると、綺麗なカーブを描いて止まったが、意外と簡単に竿が立ち上がって、水面近くまで上がってくるが抵抗しない。尺クラスの旧べらである。
次投はノーサワリでナジみ込んでしまった。まだ完全には寄りきっていない。サワリが出ないからと、圧を弱めるラフ付けに変更すると、落下途中で攻撃されて持たなくなりナジミ幅が出ない。

しっかり付けでもナジミ際でフワ、フワっとアオられ方が大きいと、ナジんだとしても決めアタリが出ない。

「バラケグルテン」「強力グルテン」

バラケ性が一番強い「バラケグルテン」の配合比率が高いとボソっ気は出るが、繊維が多くブレンドされている「強力グルテン」が倍の配合なので「真綿」のようなフワッとした滑らかタッチに仕上がる

10月14日早朝、生まれ育った奈良県から狭い水槽に入れられ運ばれてきた新べらが、午後4時過ぎに「富里乃堰」に到着した。すぐに檀谷オーナーを始めとする釣好会メンバーが見守るなか、次々と放流されていく

10月14日早朝、生まれ育った奈良県から狭い水槽に入れられ運ばれてきた新べらが、午後4時過ぎに「富里乃堰」に到着した。すぐに檀谷オーナーを始めとする釣好会メンバーが見守るなか、次々と放流されていく

ハリスが張り切っていて、ナジみきって停止した状態になるとスルーされてしまう。
ウキが立ち上がった瞬間からフカ、フカっとウケられながら1節ナジみ込んでいる途中で「チャッ!」。

次投はボディをチラっと見せて立ち上がり、フッ、フッと重々しく刻み込みながらエサ落ちを通過しかけたときに、ピタッと静止したままの状態が約2秒ぐらい続き、シャっと軽くアワせるとガツンと止まった。
タナに厚く寄っている状態のときに出る「食い止め」アタリで、水面から顔を出したのはコロっとした肉厚の良型。その魚体の綺麗さから昨年放流されたものだと推測できる。

初連チャンで取り込みに時間が掛かってしまったので、薄くなってノーサワリではないのかと思われたが…。エサ落ち近辺でフワ、フワっとアオられている。
>一瞬その動きが静かになって停止した直後に「ムズッ」と抑え込まれた。
高久氏も完璧と感じたようで強アワセをしたが…、なんの抵抗もなく水中から仕掛けが飛び出してきた。
この高い位置でのカラの後は、エサ落ち周辺でのウケ、アオリが激しく、これ以上ナジんでいかない。

短バリスでナジミ際のウケを完全に無視。タナにエサを直撃させて、明確なアタリを追い求める。

バラけさせ過ぎると口が離れてしまう

エサ落ち近辺でのウケが長く、そのままジッとしていればアタる雰囲気だが…。
高久氏は何かを確かめるように竿を手前に引いてトップを沈め「サソイ」を仕掛ける。するとトップはすぐに戻り始めて一旦は停止するが、不思議なことにサワられずにスゥーとナジんでいくのである。引きサソイをせずハリにエサが残っている状態ならば、アオられていたのだが…。
「サソって、エサを強制的に動かしたことでバラけてしまったのが原因で、エサから口が離れてしまったのでナジんだと思います。あまりバラけ過ぎはダメだよのサインです」

この言葉通りに、ナジミ際でのサワリが激しい投は、エサが持ってナジみきってからは途端に静かになってしまう。少し上に吸いアオれるバラけた粒子が漂っているからそれに反応して、ハリのエサを追いかけてこない感じのウキの動きである。

作りっぱなしではナジミ際でエサが持ったり、持たなかったりの差が激しく、ナジミ幅が安定しない。そのナジミを安定させるために、高久氏は5回ほど「押し練り」をした。ウケが長すぎるとハリスを30—40cmと短くした。
すると、落下途中の開きを抑えたことで、サワリ負けしてナジまない、ということはなくなったが…。その代償としてナジミ際でのウケが入らないで「すんなり」とハリスが張り切った状態になってしまう。

徹底して追い求めるのが高久流のようで、手水を打ってさらに押し練りをしてヤワヤワも試すが、どんどん静まりかえってしまう。
「バラけ過ぎてもダメだけど、軟らかくして『もっちり感』を強めたノーバラケにすると全く動かなくなってしまう。硬めで開くようにしてやらないとタナに寄ってこないので、エサのブレンドを変更します」

「大豆グルテン」を取る。
「このエサは個性が強いので自分的には使い勝手がいい。底釣り用で開発されているので比重があるイメージが強いです。必要以上に軟らかくしない限り、軽くて、バラける感じになります」
「大豆グルテン」、「強力グルテン」各30cc、水80cc。3分後には水分を吸い切って全体が「コワっ」と硬く締まってマッシュのフレークが少し残った状態になっている。

5投目まで3~4節ナジんで停止したままの状態が続いていたが、辛抱強く打ち返していくと、エサ落ち前でウケられるようになり、つっかえながら段階を踏んでナジみ込んでいく。
3~4節ナジみきる直前に「ガチッ!」、「チャッ!」とアタリ終わりに急ブレーキが掛かる動きで、次々と旧べらを仕留めていった。

硬くしたことでタナに入る寸前から膨らんで軽くなるので、アオられて返されることなくゆっくりとナジんでいく。その道中に「食い頃」の大きさに削られた瞬間にアタる。硬いだけにいいアタリでもカラとなるのは気にしない。
ナジミ際のアオられ方も、動き出した位置よりも返されることなく、下へ、下へとウケ、アオリを繰り返しながらナジんでいく。その動きから「食うぞ、食うぞ」というへらの厚い寄りが伝わってくる。
その釣れっぷりから、対応が見事にハマった感じとなっている。10時までに20枚以上釣ったが、ただすべて旧べらである。

「大豆グルテン」「強力グルテン」

ボソっ気が強いと上でサワるだけで終わってしまうので、落下途中では極力開きを抑えた「大豆グルテン」、「強力グルテン」のブレンド。硬くすることで持ちがよく、バラける

旧べらが薄いタナを狙うために、タナを3本半と深くした。決まっていたエサが残り少なくなってきたので作り直すのだが…。高久氏の飽くなき追究心から「違うブレントで本当にバラけ過ぎると動きが悪くなるのかを確かめさせてください」と、「ベースグルテン」50cc、水100 ccでヤワヤワ状態のところへ「バラケグルテン」50ccを絡めた戻しボソタッチに仕上げた。

変更後、1投目から立ち上がった瞬間からフワ、フワッとウケられながら、解除されてを繰り返し、ナジみ込んでいく道中に「フッ!」、「チャッ!」と小さく鋭く落とされる。

3投ほどのカラが続くと、エサ落ち前でヌーヌーと落ち着きなく上下動を繰り返すだけで、ナジんでいかなくなってしまった。持たないからと圧を強めるとナジミ際でのアオリが弱くてすんなりとナジみきってしまう。タナを3本半と深くしても新べらがくることはなく、釣りづらいだけなので、3本に戻した。

11時を過ぎると、早朝の冷え込みが信じられないほど、気温が上昇。これに刺激を受けて旧べらの活性が高くなり、ナジミ際でのアタックが強まりエサが持たなくなった。

短ハリスのダイレクト

ハリ付けの際の圧調整だけでは対応しきれない感じでナジミ幅が安定せず、アタる位置もバラバラでペースダウン。ウケが長いと当然ナジミが浅くなる。この状態だと決めアタリが出ない。出たとしてスレ、カラとなる。
高久氏はハサミを持って「ようやく大好きな短バリスで釣れそうです」と笑顔でカットすると、両グルの宙では見られない20—27cmに短くした。
硬めで開く「大豆」、「強力」ブレンドが一番反応がいいということでこちらに戻したが、ハリスを短くした分、超ラフ付けが基本。

アオられずにスゥーとナジみ込むが、その途中でチッ、チャッと小さく動き、それを見送ると「ガチッ!」、「ダッ!」とアタリ返した。この早いタイミングでアタると待望の新べらがヒットした。ナジミが停止する寸前、前後だと旧べらとなる。

ハリスが長かったときは、アオリ負けして持ちがイマイチだったが、短バリスにしたことでエサがアオられたとしても、ハリスが短くすぐに張り切った状態に戻るので、カッ、カッとしたダイレクト感のあるアタリが明確に出る。

無駄なイトズレの動きが極端に減って、食いアタリを絞りやすくなったことで釣れるペースが上昇した。

しかし、このナジミ際のカッ、カッとしたダイレクト感が感じられなくなると、寄せ不足との判断から、意識的に早打ちをする。そしてナジミ幅が浅くなると、圧を強めたハリ付けで、持たせ気味にして少し上にあるへらの口をタナへと誘導するということを繰り返しながら、明確なアタリを捉えて数を伸ばしていくのだった。

「一景」シリーズの
グルテンエサ5種類

一番バラけて、両グルの宙狙いに欠かせないのは「バラケグルテン」。粉1 対水1 でバラけ過ぎてしまうようならば「硬さ」で持たせるために水0.8 にすると持ちがよくなる。

中間的な持ち方となるのは「ベースグルテン」。繊維が多めにブレンドされているので、軟からいタッチでもしっかりタナまで持って膨らみがいい。

「一景」シリーズのグルテンエサ5種類

両グルで底釣り狙いの主役となるのは、フンワリ感が強くて、軟らかいボソタッチに仕上がる「ソフトグルテン」。繊維が多く配合されていて、宙釣りでのバラグルセットでは単品で使える。両グルの宙でサワリ負けしてしまい、持ちがイマイチならば「強力グルテン」をブレンドすれば持つはず。

栄養価に優れた大豆粉末がブレンドされている「大豆グルテン」は底釣りに適しているが、宙釣りでも比重で持たせることができる